歴史というほどのものではありませんが、前橋市でのお葬式の変容について書いてみたいと思います。
昭和初期頃は、火葬ではなく土葬が主流で、前橋市で火葬が主流になったのは昭和中期頃からです。
衛生上の問題などで全国的にも土葬から火葬への移行期で、前橋市においても、前橋市火葬場条例(昭和39年前橋市条例第40号)を廃止して、前橋市斎場条例(昭和47年3月30日条例第7号)という条例により、斎場の設置が決まり、名称を前橋市斎場、住所を前橋市天川大島町一丁目31番地1とし、本格的に火葬が行われるようになりました。
今でこそ前橋市天川大島町は住宅が多くなっていますが、当時の前橋市天川大島町は今ほど住宅が多くなく、適した場所だったのかもしれません。
昭和中期頃の前橋市でのお葬式は、主に自宅かお寺の本堂で行うのが一般的でした。
葬儀が終わると、お花入れなどをして、棺の蓋を閉めた後にその蓋に釘を打ちます。
蓋に釘打ちする際には、手頃な大きさの石などを使い、参列者が順番に釘打ちをして最期のお別れをしたのです。
その後出棺となりますが、前橋市斎場までは、霊柩車での移動となります。
ただ、それまでの土葬の場合は、埋葬場所(野辺)に葬列を成して歩いて送る、野辺送り(のべおくり)をしていましたので、この頃はその名残で自宅の庭やお寺の境内を葬列を成して3回まわってから霊柩車に乗せていました。
現在、前橋市でのお葬式では、釘打ちは行わず、参列者が手を添えて蓋を閉めることで釘打ちの代わりとしたり、式場から霊柩車に乗せるわずかな距離を、僧侶、位牌を持った喪主、お写真を持った人、棺、参列者の順番で、一列で歩くことで野辺送りの代わりとしたりしています。
3回まわったりもしません。
昭和後期から平成初期になると、葬儀社が通夜、葬儀、告別式を行えるホールを独自に持つようになってきました。
この頃はまだ、参列者が100人以上ということも普通であり、一方で核家族化が進んだことで住宅も小さめなものが増えてきていて、従来のように自宅でお葬式を行うことが難しくなってきた時代でした。
また、自宅で行う場合には、近所の隣保班(りんぽはん)の人たちが集まって、参列者に振る舞うための食事を作ったりしていましたので、これが葬儀社のホールで行って仕出の料理などにすることで、食事の準備という大変な作業や受付の設置などの細々としたお葬式の準備から解放されて、周囲の人に苦労をかけることなくお葬式が出来るというメリットがあり、お葬式は葬儀社のホールで行うものというスタイルが定着していきました。
この頃は、前橋市斎場の式場も利用されましたが、自宅近くの葬儀社のホールの方が近所の人たちが参列しやすいということで、自宅近くの葬儀社のホールでお葬式を行うというのが主流でした。
さらに、何度も人が集まるのも大変であるという理由などから、初七日法要をお葬式の中で行うというスタイルも定着していきました。
平成中期になると、それまでのような知り合いや近所の人たちが多く参列するお葬式ではなく、身近な人たちだけで行うお葬式に移行していきます。
群馬県の場合、誰かが亡くなると新聞のお悔やみ欄に故人の名前、通夜や葬儀の日時、場所などを掲載するというのが一般的でしたが、平成中期頃から徐々にそうした掲載もしなくなる家が増えてきました。
平成後期になると、参列者のほとんどが身内であったりして、不特定多数の参列者が焼香に訪れたりもしなくなったことから、家族葬というお葬式のスタイルが現れました。
家族葬に定義はありませんが、一般的に20名以下くらいの決まった身内だけで通夜と葬儀を行うお葬式です。
それまでのお葬式では、新聞のお悔やみ欄などを見て通夜や葬儀に知り合いなどが参列しましたので、何人くらいの参列者が来るのか分からない状態で香典返しを用意したり、食事を用意したりするのが大変でしたが、家族葬というスタイルでは決まった人数でお葬式を行うことになりますので、準備も簡素化出来ますし、近い身内のみということで食事などをなくしたり、祭壇なども小さくてシンプルなものに出来たりします。
これにより、お葬式の費用を抑えることも出来るようになり、費用をかけずにシンプルなお葬式をしようという流れが加速し、家族葬という名称は費用をかけずにお葬式をする代名詞のようなイメージで定着して行きました。
また、全体的な割合は高くないものの、通夜も葬儀もやらずに火葬のみを行うというスタイルも増えてきました。
令和になり、お葬式は、
・これまでのように参列者を不特定で迎えた形で通夜と葬儀を行う一般葬(参列者が決まっていても概ね30名以上の場合は一般葬と呼ぶ)
・決まった身内だけの参列で通夜と葬儀を行う家族葬(参列者が概ね20名以下)
・通夜を行わずに葬儀のみを行う1日葬
・通夜も葬儀も行わずに火葬のみを行う火葬式
というように様々なスタイルで行われております。
前橋市だと、一般葬、家族葬、1日葬が同じくらいの割合で行われていて、わずかに火葬式が行われていますが、
お葬式の簡素化の進み方が早いことや、費用をかけずにお葬式を行いたいというニーズが高くなっていることなどから、前橋市において今後はシンプルなお葬式の割合が高くなっていく流れかと思います。
【参考サイト】
前橋市斎場条例